ハンス・ベルメール:日本への紹介と影響

− 球体関節人形を中心に −


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ベルメールの影響 − 吉田 良


吉田 良 (YOSHIDA, Ryo) [吉田 良一]

人形作家にして写真家。すなわち作る者と視る者との二面を備えた男性の創作家。そういった意味で、吉田良こそ、ベルメールと日本の人形作家を比較する上で最も重要な戦略的な位置に立つ存在です。さらに言うならば、現在私たちが見ることの出来る天野可淡の人形写真は全て彼が撮影したものであり、したがって、いったん彼の眼と精神のフィルタを通過したイメージであるということを確認しておくことが必要です。そして、このことは幸いにも、男性作家と女性作家を対比するモデルとして吉田良と天野可淡を取り上げることを可能にしています。

 ハンス・ベルメール氏と四谷シモン氏の人形との出会いはほとんど同時だった、というよりどちらに先に触れたのか記憶にない・・・。とにかくあの妖しい少女を自分のものにしたい、その想いで始まった人形制作だった。
 その後、奇遇と離別、万感交々至り、気がつけば四半世紀たっていた。

吉田良一:「特集 関節人形−ベルメールを継ぐものたち」への作者コメント(「S.M.H」 Vol.11,HOBBY JAPAN, 1998.6, p.29.)

―― 吉田先生自身は、どういうきっかけで人形の世界に入られたのですか?
吉田 僕の場合は、  −(引用者による中略)−  一体のきれいな人形を見て、その虜になっちゃったわけで、人に恋するような気持ちでパッと人形を受け入れちゃったのね。まったく恋するに近いような感じがあって。
―― それはどんな人形だったんですか?
吉田 少女の人形で、生きてる人間よりもむしろきれいみたいな・・・まあ死美人的なところってあるかも知れないけどね。ただそう言っちゃうと、語弊があるけど。
―― いつごろですか?
吉田 もともと写真やってた人間で、少女ものブームっていうのがあったんですけど、沢渡さんがアリスとか撮り出した頃ですね。
―― 四谷シモンさんとか?
吉田 そうですね、四谷シモンさんなんかがデビューしだして、ベルメールがわりと注目され始め――以前は彼の写真集とか国内になかったんですが――ちょうど僕なんか古本屋とかに足を運んで探し出してたんです。20歳前後の頃。人形っていうものとの出会いが僕にとっては、命あるものに対するような感覚だったわけです。まさに生きているような人形っていうのを見たときに、すごく心が、ガッと引きつけられたわけ。

吉田良一インタビュー (「小説ジュネ」 No.27,サン出版, 1987.10.1, pp.103-109.)

このような発言を見ると、吉田良と人形との関係は、ピグマリオニズム(Pygmalionism)という言葉に見事に当てはまっているように感じられます。

なお、以上の資料を入手する以前は、ベルメールと吉田良・天野可淡との関係を裏づける情報がありませんでした。そこで、「DOLL SPACE PYGMALION」のWebサイトのBBSで直接質問したところ、吉田氏から詳細な回答をいただくことができました。その内容を以下に引用します。引用を快く認めて下さった吉田氏に深く感謝いたします。

ハンス・ベルメールの作品集は日本でも何冊か出版されています。
人形の好きな方にとっては人形で有名ですが、絵画、エッチング、もすばらしく、
銅板画家やその他の芸術家にも大きな影響を与えています、70年代に亡くなっています、
彼の死を知った時はショックでした、私も、可淡も、もちろん影響を受けています、
彼の作った人形は極端に少なく、おそらく数体だとおもいますが、
彼こそ人形を芸術の世界に取り込んだ天才です、絵画も含めそのエロチックで猥褻な表現、
しかし洗練された描写力と美しい線、模倣していてはとても超えることのできない存在です、
人形の形態であって人形でないもの、表現において「みせかけ」ではなく本質がいかに重要である
かを常に教えられる作品です、最近、こぎれいなお人形さんが多くなっていますが、魂を
揺さぶられる人形にはなかなか出会えません、私の人形表現の原点といえます。

吉田良一 「DOLL SPACE PYGMALION」のBBSにて(2001年8月8日)

[コメント]

(準備中): 吉田良の人形制作のきっかけになった人形について私の推測を述べる予定です。
2003年8月6日更新 (2001年7月21日公開)
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